2月27日

今日の花:海老根(エビネ)

花言葉:謙虚


photo 植物園へようこそ
 エビネは、「海老根」と書きます。根の形がエビの尾に似ていることからの名前だそうです。今日の花言葉「謙虚」は、茶褐色や緑褐色の渋い色や匂いのない花を付ける、エビネのひかえめでつつましやかな外見からの由来ではないかと思います。
 日本の山野に自生する日本を代表する蘭科植物の1つですが、山草愛好家のターゲットの1つでもあり、残念なことに、レッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物についての資料集)の絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)にランクされています。


 エビネが自生するのは、落葉広葉樹林。つまり、ブナ、ナラ、カンバ、ハンノキ、カエデ等のいわゆる雑木林、里山ですね。
 昔話で、おじいさんは「山」へしばかりに行きます。この「柴刈り」とは、小さい雑木を集めることで、煮炊きや暖をとるための薪を取りに行くということです。おじいさんは薪を集める傍ら、畑の肥料にする落ち葉を集めたり、夕飯のおかずにする山菜を取ったりしたことでしょう。
 昔話だけではなく、子供たちが夏休みにカブトムシを取ったり、探検して秘密基地を作った「山」。こんなふうに人間の生活に関わりの深い、近くにある「山」にエビネは自生していたのです。

 雑木林が人間の生活の場からなくなったのはいつごろなのでしょうか?
 日本でガスが家庭用燃料として一般に普及したのは1960(昭和35)年代だそうです。1960年、首都高速道路開通。カラーテレビの本放送開始。1961年、四日市喘息発生。1964年東海道新幹線開通 。東京オリンピック開催。1969年プッシュホン発売。東名高速道路全線開通。いわゆる「高度成長期」で、人口は地方から都市へ流出しました。
 一方、森林は、戦時中は軍需用資材として、戦後は戦災復興用資材として大量に伐採され、高度成長期の建築用材やパルプ用材の需要の急増に追いつきませんでした。そして、昭和30年代には、木材供給力を長期的に高めるための方策として、天然林や原野を、スギやヒノキの人工林に転換する拡大造林が積極的に進められたため、雑木林は激減しました。

 さて、生息地が少なくなってしまったエビネ。それでもスギ林の中などに見られることがあります。でも、地下茎で増える増加率は、良い環境でも10年に2倍程度だそうです。そして種子から花が咲くまでに生長するのには5年以上かかるのだそうです。これでは山草愛好家や、それを狙った業者に根こそぎとられてしまえば絶滅の危機が迫るのは当然のことでしょう。絶滅しないために我が家の庭に保護したのだと、傲慢な論理を展開される方もいらっしゃるようですが・・・。

 人間が作った時代の流れに翻弄されて、交雑されたエビネには、本来の色や匂いからかけはなれた派手な園芸品種が生まれています。それには花言葉の「謙虚」さはうかがわれません。
 「手に取らで やはり野に置け 蓮華草」とは、江戸時代の俳人・滝野瓢水が知人が遊女を身請けしようとした際に、いさめて詠んだそうですが、派手な色香をつけないエビネは山にあってこそ美しく、里に下ろしてしまえば、色も香りもつけたくなって、山にいた時とは別物になってしまう。色や香りをつけて別物になってしまったエビネは山には戻せないということに通じるでしょう。

 自然を思うがままに変えている私たち傲慢な人間に、あらゆるところに神が宿ると八百万の神を信仰して、里山の恩恵を受けていた頃の謙虚なこころを取り戻したいと、そんなことを思いました。

2006.12.11