3月2日

今日の花:アイスランド・ポピー

花言葉:慰め


photo 植物園へようこそ
 一般的に「ポピー」といえば、この花のことを言い、阿片は含みません。葉に守られない細くしなやかな茎に薄紙のような花びらをつけ、風にゆらゆらと揺れて夢を見ているようですが、蕾の時は下を向いているので、俯いて眠っているようです。

 ギリシャ神話には、ヒュプノスと言う眠りの神がいます。彼は、兄弟姉妹が非情な性格の、争いの神や死神といったなかで、大変穏やかで心優しい性格の神です。ヒュプノスは、九日九晩落ち続けた所にある冥界から、さらに九日九晩落ち続けた所にあるタルタロスという奈落に住んでいて、その雲と霧に覆われた宮殿には、ケシ(ポピー)の花が一面に咲いています。母のニュクスが地上に夜をもたらす時には、彼も従ってケシの花の力であらゆるものを眠らせるのです。
 
 ポピーは、3月1日の「私のもとへ帰って」のお話に出てきました豊穣の女神デメテルの象徴花ですが、それにもヒュプノスが関係しています。
 娘ベルセポネが行方不明になってしまったデメテルの心痛のため、大地は荒廃し作物がとれなくなってしまいました。それを見たヒュプノスはデメテルにケシの花を贈り慰めたのでした。そしてデメテルは久しぶりに安らかな眠りに落ちたのです。ケシは一つの花からたくさんの種が取れるので、豊穣の女神デメテルにはぴったりの贈り物。ヒュプノスがデメテルにしてあげられる一番の慰めは、安らかな眠りと美しい花の力。ヒュプノスの優しさが伝わりますね。

 人の世には、ヒュプノスの兄弟姉妹のように、争い、死、皮肉、愛欲、欺瞞、老醜、罪などダークなこともたくさんあります。なくてはならないようになっているのかもしれません。それはヒュプノスにはどうすることもできないのです。でも、ヒュプノスはヒュプノスにできることをしてあげるのです。それは、こころ穏やかに眠らせること。そして、死の時でさえ、最後の長い長い眠りに導くのです。


 「慰め」とは、波立っている誰かのこころを穏やかにしてあげるために、自分のできる最適のことをすること、そんなことを思いました。

2006.12.12